2025年9月11日、12日の2日間にわたって開催された「ぐんまTech EXPO」。群馬県は、自動車の株式会社SUBARUのほか、日本を代表する製造業大手の工場や、有力な中小の製造業会社が集まっている地域でもあります。
JDSCが主宰する「ものづくりJob Shop コンソーシアム」は6月下旬に発足しましたが、世間へのお披露目会としても、コンソーシアムとしての初出展としても、ちょうど良いタイミングなのも相まって、初挑戦として参戦しました。
JDSCはコンソーシアムの組成が初めてではありませんが、それぞれ本業も違う、会社規模も違う、これまでの経験やカルチャーも違うといった企業が、少なくない稼働をこの出展のために割くという状況はとてもチャレンジングであり、学びや失敗もありました。コンソーシアムの参画企業とは、現時点で出資関係等はなく、強固な信頼関係とギルドのような緩い組合のような形で結ばれています(NDAは締結済です)。今後、コンソーシアムを拡大し、プラットフォームをより強固にしていく観点では、今後も数多くの挑戦があるなと感じます。
展示会という観点では、コンソーシアムの参画企業はこれまでも各社で大小さまざまな展示会への出展経験があります。ただし今回が初めての挑戦になったのは、①ぐんまの展示会であること、②2コマという比較的大きいブースであること、③自社の展示のみならずコンソーシアムとしての出展であること、④展示会出展経験のないJDSCが主宰企業として各社をまとめていたこと、でしょうか。とは言え、展示会はどうだったかと言うと、大成功でした!!(・・と言っても怒られないよね?コンソーシアムの皆さん)。
まず、圧倒的に展示が目立っていた。そして、各社の尖った技術を展示で伝えられていた。さらに、2日間の総来場が約2700名に対して、約600部のパンフレットと数百のノベルティを全て配りきった、ということは認知面でも効果があった。そして、さらに1日目に来場された方が、その夜に展示会の有力者にご連絡くださり、「明日絶対行って見た方が良い」と強く推薦してくださり、2日目にその方がいらっしゃったとか、「社長に見てこい!と言われて来ました」と言う方々がいらっしゃったとか、「出展者の間でも噂になっていて見に来ました」とか。嬉しすぎるでしょ!
「ものづくりJob Shop コンソーシアム」のうち4社合同での出展、とても有意義でした。具体を備忘録的にも記しますので、ご笑覧ください。
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■資金より知恵で勝負!MOJO流の挑戦
出展料は、横3m×縦2mの1コマで132,200円(※県外企業の料金)でしたので、2コマ申し込んで264,000円です。東京の展示会と比べると安いと思いますが、やはりどんな出費にも相応の覚悟が要りますし、効果があるのだろうか?と期待をしてしまいます。7月に出展企業に対して現地の説明会があり、会場も見せていただくことができました。とても新しくきれいで広い会場でしたが、私が圧倒されたのはだだっ広く続くコンクリート床。これは、MOJOのスペースだけでもカーペットタイルを敷きたいなと強く思いました。実際、今回の展示会で床に敷いていた企業はとても少なかったと思います。もしかしたら弊社だけだったかもしれません。ただ、MOJOは精密な作品を多く展示するので万が一の落下の衝撃リスクも低減させたかったですし、出展ブースエリアを明確に区切って目立たせるのにも一役買ったと思います。
また、もう1つこだわったのが展示テーブルの高さです。デフォルトでの支給は、高さ0.7mのテーブルでしたが、これは人間が立った体勢ですとかなり腰をかがめないと机上のものを細かく見られません。MOJOでは、前述の通り精密な部品を多く展示するため、じっくり見ていただきたい。とすると、あまり腰をかがめずにご見学いただける高さということで、0.95mのハイテーブルを別途注文しました。これがとても良かったです。見やすさはもちろん、展示ブースも映えました。目線が高くなるのが良いですね。
今回、出展の申し込みは弊社(JDSC)で行いましたが、掲示物は「ものづくりJob Shop コンソーシアム(MOJO)」でいきたいという複雑な要望を展示会の事務局にもご相談していましたが、とても親身に対応いただきました。何度もお電話をいただき、その都度、表記について確認し、事務局の皆さまの丁寧な対応にも心から感謝しています。
一方、会場装飾については相当悩みました。お金をかければかけるほど、カッコ良く目立つものはできるかもしれませんが、費用対効果を無視するわけにも、自由に潤沢に使える資金があるわけでもありません。どこにお金をかけて、どこを創意工夫で頑張るか。でも、それこそがものづくりに携わっている人たちの見せどころではないですか。出展経験も豊富なMOJO参画企業のご意見やご協力もたくさんいただき、毎週の打合せで試行錯誤していきました。特に、背面やブース全体の明るさ、照明へのこだわりはとても学んだポイントです。


■AIパネルから3Dプリンターまで―MOJOブースの舞台裏
目立つ背面のパネルは、MOJO参画企業でもあるニッシン・パーテクチュアルがAIで画像生成し、5枚のパネルに仕上げました。数万円の投資です。撤去時を考慮して、ついたてのアルミ縁部分に両面テープを貼りながら、パネル同士もつなげていきます。ここにステージ照明のようなライトを4つ当てて、会場でもひときわ目立つブースとなりました。 展示台の上も、精密加工品がゆえに1つ1つスポットライトで照らしたいと思い、IKEAでお手頃なライトを購入して使用しました。白のテーブルクロスに黒いライトスタンドが映え、統一感も出て良かったと思います。上記のパネルと併せて、次回何かイベントをする際にも使えそうです。

さらに、初日、2日目と異なる色の共通のTシャツをスタッフ全員でそろえて着ました。初日はホットピンク、2日目はスモークブラックです。展示会では、来場者のみならず出展者同士でも展示を見学し合うケースが多いですが、彼らにこのTシャツはとても好評でした。複数社で成り立つ今回の展示の中、まとまり感を演出しやすかったのではと思います。他の出展者の方々から、「Tシャツの色がかわいい」とか、「昨日と違うカラーなのがまた良いね」と言っていただけて嬉しかったですし、対外的にも、着ている本人達にも、良い効果になったと改めて感じました。あと、何よりホットピンクは目立ちますね。
逆に、お手製感に溢れていたのは、パンフレットとノベルティです。パンフレットはパワーポイントで作成し、会社のプリンターで印刷しました。おしゃれな製本ではありませんが、お伝えしたいことをしっかり入れ込めたのではないかと思います。そして、お土産のノベルティとして、本のしおりを3Dプリンターで作成しました。JDSCでは、別のプロジェクトの中で3Dプリンター未経験のコンサルタントが活用して難所を乗り越えたといった挑戦もしていたのですが、その矢先での思いつきでした。もちろん、JDSCのMOJOメンバーには、ものづくりの現場に精通した人もいますので、デザインやモデリングから意見を出し合って試行錯誤をし、文化祭前夜のテンションみたいなノリで数百個のしおりが完成しました。来場者にお渡しする際に「3Dプリンターで作ったしおりです」とお伝えすると、皆さんとても喜んでくださいました。なんと「一生大切にします!」と仰ってくださった1人の学生もいて、真っすぐな表現に心打たれました。


さて、ここから展示のご紹介に入っていきます。
■削り出された芸術―カマキリが示す精密加工の極致
まずMOJOのカマキリはご覧になりましたか?これは、今回のぐんまTechに向けて三栄精機が夜な夜な5軸加工で削り出した逸品です。そもそもなぜカマキリなのかって?実は、筆者の息子も昆虫好きでカマキリが何匹も家にいます。彼らの身体はホントにすごい。動くものに一瞬の攻撃で大打撃を与えて仕留めてしまうのですから。カマキリの脚にも細かいとげがたくさん付いていますし、触覚もとても細かく、身体の各部所自体がとても鋭利で細いです。それをCG画像から設計して5軸加工で削り出すという美術品。私も初めて目にした時は震えました。細かい起伏や形状、非常に精密な凹凸や突起の再現。これを目の前にして、技術力の高さや精密の度合いが分からない製造業の人などいないのではないでしょうか。ということで、展示でも真ん中にライトアップして置かせていただきました。来場者の驚嘆を聞くたびに、嬉しくなりました。MOJOの参画企業はすごいのです。
他にも、もう1つ目立つものがありました。ロケットのフェアリングです。三栄精機は世界の防衛産業・医療機器・航空宇宙・半導体製造装置向けの高付加価値部品を“一発完結”で量産する工程設計が得意な会社です。


■フェムト秒レーザーが生み出す、微細加工の新境地
ブースの左手で盛り上がっていたのが、ニッシン・パーテクチュアルです。フェムト秒レーザーによる超高精度加工で作成した般若心経のスタンプが人気でした。その他、細かいプレートや、同じ面に2つの文字の加工が施してあって、かざす角度で見え方が異なる小さなサイコロなど、手に取ってじっくり見るだけでも面白い展示が多かったと思います。また、同社が長年培ってきた金型設計製造の知見と最新のフェムト秒レーザー技術を融合させた特許技術「HNP処理」(特許第774560号)を表面に施したサンプルなど、やはり間近で見るとその精密さ、微細さに驚愕します。今回の展示会では学生の来場も多かったのですが、皆さん毎度とても強く興味を示してくださいました。

■粒子法シミュレーションが開く、次世代ものづくりの可能性
ブースの右手ではモニターを置いて、粒子法などの高精度シミュレーションの展示をしました。物理シミュレーションが得意なゴーデルブロックの展示で、主宰のJDSCとも粒子法の共同研究をしています。機械学習を活用したサロゲートモデルにより、シミュレーション結果を高速に取得可能です。また、顧客ニーズに合わせた高性能ソルバーの開発についても説明を加えました。既存コードやライブラリとの統合が容易で、サロゲートモデル用の学習データ生成にも活用できます。初日の夕方に来場者の方からお電話をいただいた際も、「群馬の製造企業も今はシミュレーションにとても注目している。これからの製造業はそうあるべきだし、変わっていく。その意味でも今回の展示の意義は大きく、明日にも行けと紹介したよ」との嬉しいお話をいただきました。実際、足を止めて詳細を聞き入ってくださる方が多かったです。これから急速に広まり大きな進化を期待させるテクノロジー、皆さんの関心度の高さも会場で感じました。

■技能とテクノロジーの融合へ
主宰のJDSCは、初日の会場でミニプレゼンの機会をいただきました。代表取締役COO(展示会時は常務執行役員COO)の佐藤が登壇し、「ものづくりJob Shopコンソーシアム(MOJO)」を発足させた背景や目指す世界観のほか、JDSCならではのAI・データサイエンスでの課題解決や企業との共創事例について説明しました。MOJOでは、参画企業各社の誇る高度な技能の集結が強みですが、プロダクト設計や試作・量産だけでなく、JDSCがこれまで得意としてきた製造コンサルティングやAI・データサイエンスの高い技術も活用することで、製造プロセスそのものの課題解決など幅広い貢献を目指しています。
(株式会社JDSC 益本佳代子)
